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「電子帳簿保存法の対応」自社でやる?専門家に頼む?

「電子帳簿保存法の対応」自社でやる?専門家に頼む?

メールで届いた請求書と紙の領収書が混ざり、電子帳簿保存法(電帳法)の対応を自社で進めるか外部に頼むか迷うこと、ありますよね。 メール添付のPDF請求書、決済サービスから落とした領収書、クラウドで締結した契約書。受け取り方の違うデータが同じフォルダに積み上がったまま月末が来る、という状態は起こりがちです。

対応範囲の切り分け方、自社で回せるかどうかの見方、外部に頼むなら何を渡すかを順に整理します。読み終えたとき、次に手を付ける書類が一つ決まる状態を目指します。

最初に、どのデータが電子取引に当たるかを仕分けます。そのうえで、自社で回せるか、外部に頼むかを四つの軸で見ます。

  • まず電子取引に当たるデータを仕分け、そのうえで自社で回せるかを見ます。
  • 税務関係書類に当たる電子取引データは、原則としてデータのまま残す必要があります。印刷して紙で持つだけでは、データ保存の代わりになりません。
  • 自社で回すか頼むかは、実際に測った作業時間、受け取り経路の数、検索できる保存を維持できるか、最終確認者を置けるかで判断します。
  • 外部に頼む場合は、作業の代行と体制づくりの助言を分け、どちらを買うのかを先に決めます。
  • 作業を外に出しても、保存義務そのものは自社に残ります。

電子取引と紙書類を自社対応または外部依頼へ分ける全体図

電子帳簿保存法の対応を分けて考える前提

電子帳簿保存法の対応は、書類名で分けるより「どう受け取ったか」で分けると判断しやすくなります。メールやWebでやり取りしたデータ、紙で受け取った書類、自社で作った帳簿。この三つは求められる扱いが違います。ここを分けないと、外注の見積もりも社内の作業計画も組めません。

国税庁の電子帳簿等保存制度特設サイトでは、制度が電子帳簿等保存、スキャナ保存、電子取引データ保存の区分で整理されています。このうち、データでやり取りがある事業者が必ず関わるのが電子取引データ保存です。

 

対象になるデータの見分け方

判断軸はシンプルです。取引に関する書類の内容を、データでやり取りしたかどうか。メール添付のPDF請求書、取引先サイトからダウンロードした支払明細、クラウドサービス上の領収書。これらは電子取引データに当たります。税務関係書類に当たる電子取引データは、原則としてデータのまま保存する必要があり、紙に印刷して残すだけでは代わりになりません。

手を動かすなら、直近1か月分のメールと決済サービスの履歴を見てください。請求書、領収書、注文書、支払通知。この四つの言葉で検索して出てきたデータが、そのまま対象の候補になります。件数を数え、その作業にかかった時間も測っておくと、次の判断が早まります。

 

紙とデータが混ざっているときの並べ方

同じ取引先からの請求書が、先月は郵送で今月はPDF。こうした混在は珍しくありません。迷ったら、受け取り方ごとに保存先を分けるのが無難です。無理に一本化しようとすると、移行作業だけで月をまたぎます。

紙で受け取った書類は、必ずデータ化しなければならないわけではありません。紙のまま保存を続ける判断も残せます。スキャンしたうえで紙を捨てるなら、スキャナ保存の要件を満たす必要があります。電子取引データはデータのまま残す義務がありますが、紙をスキャンしてデータ化するかどうかは任意です

 

社内で先に決めておく三つ

外部に相談する前でも、決められることがあります。保存先をどこにするか、ファイル名の付け方をどうするか、最後に確認する人は誰か。この三つは、社内の事情がわからないと外部の人も決めようがありません。

保存先なら、共有フォルダに年度と月のフォルダを作り、その下を取引先別に並べる形があります。ファイル名は「取引日_取引先名_金額」のように、後から探す条件をそのまま入れておくと楽です。最終確認する人は、経理担当が一人なら本人、複数いるなら月次を締める人に寄せます。

作業時間・受け取り経路・検索維持・確認者の四つの判断軸

自社対応と外部依頼を分ける判断軸

自社でやるか頼むかは、測った作業時間、受け取り経路の数、検索できる保存を維持できるか、最終確認者を置けるか。この四つで見ると迷いが減ります。「何件なら自社」という一律の線はありません。同じ件数でも、経路が一つに揃っている会社と、担当者ごとに受け取り先が違う会社では負担がまったく違うからです。

 

作業時間を測って見る

件数を数えるだけでは判断材料になりません。1か月分のデータを集め、ファイル名を付けて所定のフォルダへ入れる。その一連の作業に何分かかったかを測ります。測った時間が、毎月そのまま積み上がる負担です。

結果が通常業務の合間に収まるなら、自社で回せる範囲に入ります。繁忙期に確保できない量だと感じたら、そこが外部の手を借りる検討ラインです。件数の多い少ないではなく、自社の手持ち時間と並べて判断してください。

 

受け取り経路がいくつあるか

経路の数は、やり忘れの起きやすさに直結します。メール1本に集約されているなら、確認場所は一か所です。取引先サイト、決済サービス、担当者の個人メールと分散していれば、そのすべてを毎月見に行くことになります。

まず経路を書き出して数えてください。経路ごとに「誰が見るか」を書き添えると、抜けそうな箇所が浮かびます。経路が担当者ごとにばらけていて集約の見込みが立たないなら、仕組みの設計から外部に相談する価値があります。

 

検索できる保存を維持できるか

電子取引データの保存で確保するのは真実性・見読可能性・検索性の三つです。真実性は訂正・削除の履歴が残るシステムに保存します。見読可能性はパソコンとプリンタを備え、その場で表示・印刷できる状態です。検索性は取引年月日・取引金額・取引先で探せる状態を保ちます。緩和されるのは検索の要件だけで、売上規模などの条件で扱いが変わります。該当するかは国税庁の案内で確認してください。

専用システムがなければ、ファイル名に三つの情報を入れる、表計算ソフトで索引を作る方法があります。決めた方法が担当者を問わず来月そのまま回るなら自社で維持できます。過去分を直さないと探せない、月末に未処理が残るなら外部に相談してください。

 

最後に確認する人を置けるか

保存作業を誰かがやっていても、抜けを見つける人がいないと気づけません。月末に「先月分、全部入っているか」を見る担当を決めておくと、差し戻しが減ります。担当者しか中身を知らない状態は、その人が休んだ瞬間に止まります。

確認する人を社内に置けない場合、外部に頼む理由がはっきりします。作業を全部渡すのではなく、チェックだけを頼む形も選べます。外注は作業の肩代わりだけでなく、確認する目を増やす手段としても使えます。

電子取引データを収集・命名・保存・確認する四つの手順

判断表で見る自社対応と外部依頼

測った作業時間、受け取り経路の数、検索できる保存の維持、最終確認者。この四つを表にまとめます。下段の「頼む内容」は判断の項目ではありません。四つを確認した結果として、外部に渡す範囲の目安を示したものです。

確認する項目自社で進める部分的に頼む全体を頼む
1か月分で測った作業時間通常業務の合間に収まる繁忙期は確保が難しい毎月の確保が見込めない
受け取り経路の数メールなど少数に収まる経路が複数に分かれている担当者ごとに経路が違う、または経路を把握できていない
検索できる保存の維持ファイル名ルールで維持できる索引を維持できるか不安がある仕組みから設計したい
最終確認者社内に置けるチェックだけを外部に頼みたい社内に経理の担当がいない
頼む内容(判断の結果)ルール設計と月次チェック保存作業、体制構築、運用代行

自社で進める、部分的に頼む、全体を頼むの順に、費用は増える一方で社内の作業時間は減ります。この三つのどれかが正解ということではありません。判断表は正解を固定する道具ではなく、確認順をそろえるための道具として使ってください。

外注前にそろえる対象範囲・期間・担当者・確認時期

外部に頼むときに渡す情報と依頼の進め方

頼むと決めたら、次は渡す情報の準備です。ここが曖昧なまま相談すると、見積もりが大きく振れたり、着手後に追加作業が出たりします。先に揃えておく資料は多くありません。

 

準備するもの

相談前に手元にあると話が早いのは、次の項目です。数字が正確でなくても、おおよそで構いません。

  • 直近1か月の電子取引データ件数と、保存作業に実際かかった時間
  • 受け取り経路の一覧(メール、取引先サイト、決済サービスなど)
  • 現在の保存先と、ファイル名の付け方
  • 経理を担当している人数と、月次を締めている人
  • 会計ソフトや請求書ソフトを使っている場合は、その名称

 

依頼内容の書き方

依頼の中身は、作業の代行と、体制づくりの助言に分けて伝えます。混ざったまま相談すると、相手も何を提案していいか判断できません。「月次の保存作業を代行してほしい」と「社内で回せるルールを一緒に作ってほしい」では、必要な期間も費用も変わります。

依頼文に入れると話が早い要素は、対象範囲、期間、社内の担当者、確認のタイミングの四つです。「電子取引データの保存ルール設計を、初回3か月で。社内担当は経理1名。月末に進捗を共有」。このように一文で範囲が伝わる形にしておくと、見積もりのブレが減ります。

 

頼んだ後に残す記録

作業を外部に委託しても、保存義務を負うのは自社のままです。だからこそ、誰が何をどこまでやったかを一枚の文書にまとめ、社内に残してください。

依頼先に相談した内容と回答も、日付つきでメモに残します。制度の運用は見直されることがあるため、いつ時点の判断かがわかる形にしておくと後から確認しやすくなります。

 


実務で進める順番と確認基準

準備、仕分け、保存、確認。この順に進めると、担当者が変わっても同じ形で回せます。最初から完璧を目指さず、1か月分を通して試すところから始めるのが現実的です。

 

1か月分を通してやってみる

まず先月分のデータだけを対象にします。メールと決済サービスの履歴から該当データを集め、決めたファイル名で保存先へ入れる。ここまでで、どこに時間がかかるかが見えてきます。

完成例のイメージは単純です。共有フォルダの「2026年度>09月>〇〇商事」の中に、「20260905_〇〇商事_88000.pdf」のような名前でファイルが並んでいる状態です(取引先名・金額は架空の例です)。こうなっていれば、取引日、取引先、金額で探せます。

 

できたと判断する基準

作業が終わったかどうかは、次の5項目で見ます。5項目すべてを満たせていれば、ひとまず運用に乗せられます。

  • 先月受け取った電子取引データが、保存先にすべて入っている
  • 取引日、取引先、金額のどれからでも探せる状態になっている
  • 担当者以外の人が、説明なしで1件見つけられる
  • 誰が最後に確認したか、日付つきで残っている
  • 紙で受け取った書類との保存先の違いが、社内で共有されている

 

つまずいたときの対処

引っかかりやすいのは三つです。同じ取引先から何件も届いてファイル名が重複する、金額が後から変わる、データの一部が担当者の個人メールに届いている。どれも運用を止めるほどではありませんが、放っておくと探せなくなります。

ファイル名の重複は、末尾に連番(枝番)を付けて区別します。たとえば同じ日に同じ取引先から同額の請求が2件届いたとします。1件目を「20260905_〇〇商事_88000-1.pdf」とします。2件目は「20260905_〇〇商事_88000-2.pdf」として並べます。

金額の修正があった場合は、元のデータを消さずに残してください。修正後のデータは別ファイルで保存し、どちらが最新かわかる名前にします。個人メール宛の受信は、取引先へ送付先の変更を依頼するのが早道です。

 

制度確認の進め方と相談先

 

一次情報で確認する

電子帳簿保存法の細かい要件は、国税庁の電子帳簿等保存制度特設サイトと、電子帳簿保存法一問一答のページで確認できます。検索要件の例外や緩和の扱いは見直されることがあります。社内ルールを固める前に、最新の案内を見ておくのが確実です。

確認した日付を社内メモに残しておくと、次に見直すときの起点になります。

 

税理士や専門家に聞く範囲

自社の取引が要件を満たしているかの個別判断は、顧問税理士や所轄の税務署に確認するのが確実です。一方で、フォルダ構成やファイル名のルール、月次の確認手順といった運用面は、バックオフィスの実務に詳しい相手のほうが具体的な案を出せます。

聞く相手を分けると、相談の往復が減ります。制度の解釈は税務の専門家へ、日々の回し方は実務側へ。この振り分けを先に決めておくと、確認待ちで止まる時間が短くなります。

 

まとめ

電子帳簿保存法の対応を自社でやるか頼むかは、測った作業時間、受け取り経路の数、検索できる保存の維持、最終確認者で見ます。細部は国税庁の案内で確認を。

  • まず自社の電子取引データを1か月分仕分け、件数と作業時間を記録する
  • 受け取り経路を書き出し、保存先とファイル名のルールを決める
  • 紙で受け取った書類との扱いの違いを社内で共有する
  • 最終確認者を置けるかどうかで、外部に頼む範囲を決める
  • 頼むときは作業代行と体制づくりを分けて伝える

 

次に確認すること

今日できることを一つだけ選ぶなら、先月届いた電子取引データを経路ごとに仕分けることです。そして、数と作業時間を書き留めます。その結果を判断表に当てはめれば、自社で進めるか、部分的に頼むかの見当がつきます。

経理の担当が抜けた状態で急ぎの対応が必要な場合は、「経理の人が辞めた」急場をしのぐ外注の使い方も参考になります。社内の仕組みから整えたいときは、バックオフィスのDX、小さな会社が最初に手をつける1つで着手順を確認してみてください。

仕分けた結果、最も件数の多かった受け取り経路の書類が、次に手を付ける1つです。 そこから保存先とファイル名のルールを当てていけば、残りの経路にも同じ形を広げられます。

参考情報


Q&A

電子取引データを印刷して紙のファイルに綴じておけば、データは消してもよいですか。

税務関係書類に当たる電子取引データは、原則としてデータのまま保存する必要があります。印刷して紙で持つことは、データ保存の代わりにはなりません。紙の控えを併せて持つのは差し支えありませんが、元のデータは残してください。自社の取引がどの扱いになるかは、国税庁の電子帳簿等保存制度特設サイトや一問一答で最新の案内を確認し、個別の判断は顧問税理士や所轄の税務署にご相談ください。

月に何件を超えたら外部に頼むべき、という目安はありますか。

件数だけで決まる一律の線はありません。1か月分の保存作業に実際かかった時間、受け取り経路の数、検索できる保存を毎月維持できるか、最終確認者を社内に置けるかの四つで判断することをおすすめしています。同じ件数でも、経路が一つに揃っているか担当者ごとにばらけているかで負担は大きく変わります。まず1か月分を通してやってみて、測った時間を自社の手持ち時間と並べてください。

保存作業を外部に委託すれば、保存義務も委託先に移りますか。

移りません。作業を外部に出しても、保存義務を負うのは自社のままです。そのため、委託先とのやり取りや決めたルールは社内にも記録として残し、誰が何をどこまで対応したかをたどれる状態にしておいてください。相談した内容と回答は日付つきでメモしておくと、制度の運用が見直されたときに「いつ時点の判断か」を確認しやすくなります。

著者

塩野谷 拓

2nd CORE代表。建設会社で7年間、総務・経理を中心とするバックオフィス実務を経験し、2022年に独立。

現在はフリーランスとして、一人社長・個人事業主を中心に、事務・経理代行、バックオフィス業務改善、Web制作を支援しています。現場で培った経験をもとに、実務で役立つバックオフィスの整え方を発信。

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