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労働保険の年度更新、初めての担当者でも迷わない計算と申告の流れ

労働保険の年度更新、初めての担当者でも迷わない計算と申告の流れ

労働保険の年度更新を初めて任されると、賃金集計と申告書のどちらから手を付けるか迷いやすいですよね。

年度更新は「前年度の確定保険料」と「今年度の概算保険料」を1枚の申告書でまとめて扱う手続きです。

前任者のファイルは残っているのに、どの数字をどこから拾うのかまでは書かれていない。そんな引き継ぎは実務でもよくある話です。年度更新そのものは、去年1年分の保険料を確定させ、今年の分を先に申告して納める手続きです。作業量が多いというより、賃金の集計範囲、確定と概算の使い分け、提出前に誰が見るのか。この3つが決まっていないせいで手が止まります。そろえる書類の順番、計算の考え方、差し戻しを減らす確認の並べ方を、初めての担当でも追える形に整理します。

  • 年度更新は「前年度の確定保険料」と「今年度の概算保険料」を1枚の申告書でまとめて扱う手続きです。
  • 受付は例年6月1日から7月10日まで。年度によって期日がずれることがあるため、その年の案内で確認します。
  • 迷いの大半は賃金集計で起きます。労災保険は雇用する人全員、雇用保険は加入者だけ、と対象を分けて数えます。
  • 計算より先に「確認する人」と「保存先」を決めておくと、差し戻しと確認待ちが減ります。
  • 料率や分割納付の条件は改定されることがあるので、厚生労働省や都道府県労働局の案内で年度を合わせて見ます。

労働保険の年度更新でやることの全体像

年度更新でやることの全体像

労働保険の年度更新は、前年度に支払った賃金をもとに保険料を確定させ、今年度分を概算で申告して納める手続きです。労災保険と雇用保険を1枚の申告書で扱うため、書類は1枚でも中身は二階建てになります。

 

労災保険と雇用保険をまとめて精算する

「労働保険」は、労災保険と雇用保険をまとめた呼び方です。申告書は1枚ですが、対象になる人の範囲が保険ごとに違います。書類は1枚、集計は2本立てと考えておくと、途中で数字が合わなくなったときに原因を探しやすくなります。

たとえばパートやアルバイトの方は、労災保険では雇っている人全員を拾います。一方で雇用保険は、加入している人の分だけを集計します。同じ賃金台帳を、違う目で二度見る作業だと思っておくと気が楽です。

 

申告と納付の時期

受付期間は例年6月1日から7月10日までとされています。期日が土日祝に重なる年はずれることがあるので、その年度の案内で日付を押さえておくと安心です。申告書の用紙も、例年5月末から6月にかけて事業主あてに届きます。

逆算すると、5月中旬に賃金の集計、6月上旬に計算、6月下旬に社内確認、という並びが回しやすいです。締切間際は窓口も電子申請も混み合いやすいので、7月頭を自社の締切として置いておく方が落ち着いて進められます。同じ時期には別の手続きも重なります。算定基礎届(定時決定)、7月提出を迷わない書き方と対象者の基本もあわせて見ておくと、6月から7月の予定を一度に組めます。

 

初めての担当者がつまずきやすい場所

最初の年に時間を取られるのは、計算そのものではありません。どの手当を賃金に含めるか、退職者の分をどう扱うか、といった「範囲の判断」です。ここを前任者の感覚で埋めてしまうと、翌年に理由が分からなくなります。

判断に迷った項目は、その場で一行メモを残しておくのがおすすめです。「通勤手当は含めた/賃金台帳のこの欄から」程度で十分。来年の自分か、次の担当者が助かります。

労災保険と雇用保険で対象者を分ける判断軸

賃金の集計から保険料計算までの手順

計算は、確定と概算を分けて考えると迷いにくくなります。前年度の実際の賃金で確定保険料を出し、今年度の見込み賃金で概算保険料を出す。この2つを比べて、差額を精算する仕組みです。

 

集計対象になる賃金を決める

基準は「労働の対価として支払われたものかどうか」です。基本給や各種手当、賞与は含めるのが一般的で、実費の弁償にあたるものは扱いが変わります。判断に迷う項目は、自己流で決めずに労働局の案内や手引で確認しておくと後が楽です。

実務では、賃金台帳の項目一覧を印刷して、含める・含めないを横に書き込む方法が分かりやすいです。一度作れば翌年からはその紙をなぞるだけになります。集計の起点を支払日にするか締め日にするかも、最初に決めて書き添えておきます。

 

労災保険と雇用保険で対象者を分ける

労災保険は、雇っている人をひとまとめに数えます。雇用保険は、加入している人だけを数えます。役員や同居の親族など、扱いが分かれる立場の人がいる場合は、雇用契約の有無や実際の働き方を見て判断します。

おすすめは、集計前に対象者リストを作ってしまうことです。氏名の横に「労災のみ」「労災+雇用」の区分を入れておけば、金額を足す段階で迷いません。年度の途中で入社や退職があった人は、その日付も同じ行に残しておきます。

 

確定保険料と概算保険料を別々に出す

確定保険料は、前年度に実際に支払った賃金の総額に保険料率を掛けて計算します。概算保険料は、今年度の賃金見込み額を使います。見込みは前年度の実績と同じにするのが基本ですが、人員が大きく増減する予定があるときは別の扱いになることがあります。

料率は年度ごとに改定されることがあります。去年のファイルの数字をそのまま引き継ぐと、静かに間違えます。年度と料率はセットで確認。これだけで、翌年の修正作業がひとつ減ります。

 

差額の精算と納付回数

前年度に納めた概算保険料と、今回出した確定保険料に差が出たら、その差額を今年度の概算分に充てるか、追加で納めるかで精算します。申告書の記入欄に沿って進めれば、順番で迷うことは少ないはずです。

納付は一括のほかに、保険料が一定額以上の場合や労働保険事務組合に委託している場合など、条件に当てはまれば分けて納める方法もあります。金額の条件は年度の案内で確認し、分割にするなら資金繰りを見る人へ早めに共有しておくと話が早いです。

準備から共有までの労働保険年度更新の実務手順

提出前に見る判断軸

迷いが出るのは、たいてい同じ場所です。名前より「何を基準に見るか」で並べておくと、担当が変わっても同じ答えにたどり着きます。下の表は、そのまま確認メモとして使える形にしています。

迷う場面見る基準先に決めておくこと
手当を賃金に含めるか労働の対価として支払ったか賃金台帳の項目ごとの扱いメモ
役員や親族を数えるか雇用契約の有無と実際の働き方対象者リストの区分欄
年度途中の退職者年度内に支払いがあったか集計期間の基準(支払日か締め日か)
今年度の賃金見込み前年度から大きく変わる予定があるか増減の理由メモと確認する人
納付を分けるか保険料額と事務組合委託の有無資金繰り担当へ共有する時期

判断表は正解を固定する道具よりも、確認する順番をそろえるための道具です。埋まらない欄が出たら、そこが今年の要確認事項だと分かります。

提出前に見る労働保険年度更新の確認項目

実務で進める順番

準備、作成、確認、共有の4つに分けると、途中で中断しても再開しやすくなります。担当が一人でも、引き継ぎの形にしておくと来年の負担が変わります。

 

準備するものをそろえる

先に手元に集めるのは、届いた申告書、前年度の申告書控え、賃金台帳、対象者リスト、その年度の手引です。ここが欠けたまま計算を始めると、途中で止まって数字の意味を忘れます。

電子申請を使う場合は、アカウントや電子証明書が有効かどうかも早めに見ておきます。申請直前に期限切れが判明する、というのは避けたい詰まり方です。

 

作成後に確認する

自分で計算して自分で出す体制でも、確認の目は分けておくと安心です。金額の合計、対象者の人数、前年度との差、この3点だけでも別の日に見直すと気づきが増えます。

確認を人に頼むときは、範囲を一文で伝えると話が早いです。「賃金総額の合計と前年度との差額だけ見てください」のように、見てほしい欄を名指しします。確認範囲を一文で残すだけで、差し戻しのやり取りはかなり減ります。

 

共有と保存まで決める

提出して終わりにせず、控えと計算根拠をセットで残します。申告書の控え、賃金集計の元データ、判断メモ。この3点が同じ場所にあると、翌年は探す時間がほぼゼロになります。

ファイル名は「年度_労働保険年度更新_控え」のように、年度を先頭に置くと並び順で迷いません。電子で保存する場合の考え方は、領収書の電子保存、スキャンするときのルールと注意点の整理も参考になります。保存期間の扱いは書類の種類で変わるため、社内ルールとあわせて確認しておくと安全です。

 


差し戻しや問い合わせが起きやすい場面

提出後に連絡が来るのは、計算ミスよりも「根拠が読み取れない」ケースが目立ちます。数字そのものより、なぜその数字になったのかが残っているかどうかです。

  • 賃金総額に含めた手当の範囲が、前年度と変わっているのに理由が残っていない。
  • 雇用保険の対象者数と、加入手続きの記録が合っていない。
  • 今年度の見込み額を前年度と大きく変えたのに、増減の背景メモがない。
  • 提出前に見る人を決めておらず、社内での確認が止まったまま締切が近づく。
  • 控えが担当者の個人フォルダにだけあり、他の人が探せない状態になっている。

どれも、作業の途中で一行メモを足しておけば防げるものばかりです。完璧な記録を目指すというより、来年の自分が読んで分かる程度で十分だと考えておくと続きます。

 

まとめ

年度更新は、賃金の集計範囲を決める、確定と概算を分けて計算する、提出前の確認者と保存先を決める。この順番で進めると、初めてでも道筋を見失いにくくなります。

  • 労災保険は雇う人全員、雇用保険は加入者だけ。対象者リストを先に作る。
  • 料率と期日は年度ごとに確認する。去年のファイルの数字を流用しない。
  • 判断に迷った項目は一行メモを残し、控えと同じ場所に保存する。

 

次に確認すること

今日できる一手として、まずは賃金台帳の項目一覧を開いて、含める・含めないの欄を作ってみてください。全部を埋めなくても構いません。迷った項目に印を付けるだけで、確認すべきことが目に見える形になります。

そのうえで、今年度の受付期間と料率、分割納付の条件を、厚生労働省や都道府県労働局が出しているその年度の年度更新案内で確認します。制度の根拠条文を当たりたいときは、e-Gov法令検索で労働保険の保険料の徴収等に関する法律を見ておくと、社内説明のときに話が通りやすくなります。

参考情報


Q&A

労働保険の年度更新は何から始めるとよいですか?

まず賃金台帳、労働者名簿、前年度の申告書控えをそろえ、前年度の賃金総額を集計します。確定保険料と概算保険料を混ぜず、順番を分けると迷いにくいです。

確定保険料と概算保険料は何が違いますか?

確定保険料は前年度の実績で計算するもの、概算保険料は新年度の見込みで計算するものです。同じ申告書に出てきますが、見る年度が違うので別作業として扱うと確認しやすいです。

申告期限はどこで確認しますか?

年度ごとに厚生労働省や都道府県労働局の案内で確認します。令和8年度は厚生労働省が6月1日から7月10日までと案内しているため、実際の提出前に最新ページを見ておくと安心です。

著者

塩野谷 拓

2nd CORE代表。建設会社で7年間、総務・経理を中心とするバックオフィス実務を経験し、2022年に独立。

現在はフリーランスとして、一人社長・個人事業主を中心に、事務・経理代行、バックオフィス業務改善、Web制作を支援しています。現場で培った経験をもとに、実務で役立つバックオフィスの整え方を発信。

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