承認フローを作ろうとしたのに、誰がどの欄をどこまで見るのかが決まらず、申請書を前に手が止まる。出した書類が途中で止まる、差し戻しの理由が人によって変わる。どちらも、承認する人が見る欄と役割が決まっていないときに起きやすいつまずきです。迷うのは無理のないことです。目的、日付、金額、承認者の順に決める判断軸と、用途別の判断表をそろえました。差し戻しの多い書類を一つ手元に置けば、読みながらその場で見直せます。
承認フローの作り方は、書類名ではなく承認の目的で分けるのが先です。条件提示、事実の記録、支払い依頼の三区分ごとに「承認者が見る欄」と承認のタイミングを決めると、誰が何を見るかが明確になります。
この記事の結論を先にまとめます。
- 日付と金額は、同じ人が見る場合でも先に見る順番を決めます。担当を分けられるなら、日付と金額で担当も分けます。
- 承認者は役職名で選ばず、差し戻す権限を持つ人を一人に絞ると止まりにくいです。
- 完了の判定は、承認者の名前と承認日が記録に残っているかで行います。
承認フローづくりで最初に決める三つのこと
承認フローの作り方は、書類の名前より、承認の目的、承認を挟むタイミング、承認者に求める行動の三つで分けると決めやすくなります。名前が違っても目的が同じなら、同じ流れに乗せられます。
目的の違いで分ける
同じ「申請書」でも、相手に条件を示す書類と、起きた事実を残す書類と、お金を出す書類では、見る欄が変わります。承認の目的は、条件提示、事実の記録、支払い依頼の三つに分かれます。この区分に当てはめてから承認者を考えると、流れを作る時間が短くなります。
たとえば見積書は条件提示、作業完了報告は事実の記録、外注費の請求書にもとづく支払い申請は支払い依頼に入ります。金額が入った注文請書は、条件提示と支払い依頼の二つに見えます。この場合は、支払いが発生する側、つまり支払い依頼として扱うと判断がぶれません。
承認を挟むタイミング
承認は「出す前」か「終わった後」のどちらかに置きます。条件提示は社外へ出す前、事実の記録は作業が終わった後、支払い依頼は支払日の前が基本の置き場所です。
回す時点を決めないと、送信済みの見積書に後から承認が回る、という順番の逆転が起きます。書類ごとに一行で書き出しておくと、担当者が変わっても同じ順番で動けます。
承認者に求める行動
承認者に何を求めるのかは、意外とあいまいなまま運用されます。「読んで了解する」だけなのか、「金額を計算し直す」のか、「差し戻して修正させる」のか。ここが違うと、承認にかかる時間も変わります。
承認者に求める行動を一つだけ選んで書き出すことをおすすめします。二つ以上を同じ人に持たせると、承認した側も申請した側も、どこまで見たのかを後から説明できなくなるからです。
差し戻せる人が承認者という線引きにすると、確認だけの人は回覧、判断する人は承認に分かれます。回覧と承認を同じ扱いにすると、誰も止めないまま進むことがあります。
承認フローの設計で見る判断軸
承認フローの設計では、目的、日付、金額、承認者を別々に見ると、確認待ちと差し戻しを減らせます。四つを一度に見ようとすると、どれかが抜けたまま先へ進みます。
書類名ではなく目的を見る
社内でよく見かけるのは、書類名で承認者を決めてしまう作り方です。「報告書は課長」と決めると、支払いにつながる報告書まで同じ人に回り、金額を見る人がいなくなります。
判断の順番としては、まず目的を区分し、その区分に対して承認者を割り当てます。支払いにつながる報告書なら、課長ではなく支払いを実行する担当を承認者にします。新しい書式が増えたときも、名前を見ずに「これは支払い依頼か」と当てはめれば、流れを作り直さずに済みます。
日付と金額は別々に見る
日付と金額は、間違いの出方が違います。日付は締め日や計上月のズレ、金額は単価と数量の取り違えや税の扱いで起きます。同じ人が確認する場合は、日付の欄をすべて見終えてから金額に移ります。二つの欄を行き来しながら見比べると、見落としが増えます。担当を分けられるかは、その次の判断です。
人を分けられる場合は、日付は申請者の近くにいる担当、金額は支払いを実行する担当が確認する形が回しやすいです。金額の上限で承認者を変える場合は、その基準額を社内の規程で確認してから書き込みます。
承認者は流れを図にする前に決める
目的・日付・金額を決めたら、流れを図にする前に承認者を決めます。順番や分岐は後から直せますが、誰が最後に差し戻すのかが決まっていないと、図を作っても止まります。
一つの書類の最終承認者を一人に絞ることをおすすめします。二人並べると「相手が見たはず」という譲り合いが起き、申請した側が確認待ちのまま数日待たされるからです。
宛名と対象がずれるとき
差し戻しで多いのが、宛名と中身の対象がずれているパターンです。前回の書類を複製して作ると、宛名だけ残り、現場名や期間が古いままになります。
承認者が見る欄に「宛名」と「対象期間」を並べて置くと、目で突き合わせられます。申請する側では、複製した書類は宛名を一度消してから入力する手順にしておくと防ぎやすいです。
添付資料が足りないとき
添付不足は、承認者が判断できずに止まる典型です。見積の根拠、現場の写真、相手からのメール。どれが必要かは目的ごとに違うので、書類単位で「添付するもの」を固定します。
対処をそろえるなら、添付がないときに承認者が何をするかを決めておきます。差し戻すのか、条件付きで承認して後で追うのか。ここを決めておけば、承認者ごとの対応差が出にくくなります。
回す前に申請する側が見る欄を、四つに絞って並べます。
- 目的の区分:条件提示、事実の記録、支払い依頼のどれか
- 日付:申請日、対象期間、支払期限がそろっているか
- 金額:単価と数量、税の扱い、合計の並びが一致しているか
- 添付:目的ごとに決めた資料がついているか
用途別の判断表
判断表は、条件提示、事実の記録、支払い依頼の三区分で、承認者が見る欄、承認のタイミング、完了の確認基準をそろえた一覧です。表の見出しに使う言葉は、本文でも申請する書類の記入欄でもそろえます。
| 区分 | 代表的な書類 | 承認者が見る欄 | 承認のタイミング | 完了の確認基準 |
|---|---|---|---|---|
| 条件提示 | 見積書、提案書 | 対象期間、単価、有効期限 | 社外へ出す前 | 承認者の名前と承認日が残っている |
| 事実の記録 | 作業完了報告、検収記録 | 日付、作業内容、添付資料 | 作業が終わった後 | 承認者の名前と承認日、添付資料がそろっている |
| 支払い依頼 | 請求書の支払い申請、経費精算 | 金額、支払期限、宛名や口座 | 支払日の前 | 承認者の名前と承認日、金額の根拠が残っている |
境界にある書類も出てきます。金額が入った注文請書は条件提示に見えますが、支払いが発生するなら支払い依頼として扱います。迷ったときは、金額が入った注文請書と同じ考え方で、支払いが発生する側を優先します。後から見た人も同じ結論にたどり着けます。
表は正解を固定する道具ではありません。自社の書式に合わせて代表的な書類を入れ替えながら、「承認者が見る欄」と「承認のタイミング」をそろえる使い方が向いています。
実務で進める順番
手順は、準備、作成後の確認、共有と保存の順に分けると、担当者が変わっても同じ形で回せます。図を描く前に、いま回っている書類の棚卸しから入るほうが早く仕上がります。
準備するものをそろえる
まず、社内で回っている書類を一覧にします。名前、目的の区分、今の承認者、止まりやすい場所の四つを並べるだけで、重なっている承認が見えてきます。
一覧に並べる列は、次の四つです。あわせて、社内の規程や取り決めで承認できる範囲が書かれている箇所を手元に開いておきます。
- 書類の名前:実際に回っている書式の名前をそのまま書きます
- 目的の区分:条件提示、事実の記録、支払い依頼のどれか
- 今の承認者:いま実際に承認している人の名前
- 止まりやすい場所:どの段階で確認待ちになるか
作成後に確認する
一覧ができたら、用途別の判断表の列(区分、代表的な書類、承認者が見る欄、承認のタイミング、完了の確認基準)に沿って、一覧に並べた書類を一行ずつ書き込みます。記入例は「支払い依頼/経費精算/金額・支払期限・宛名/支払日の前/承認者の名前と承認日、金額の根拠」のように、一行で読み切れる長さにします。
完成の目安は、判断表のどの行も区分、承認者が見る欄、承認のタイミング、完了の確認基準の四つが埋まっている状態です。空欄が残る書類は運用がまだ決まっていないので、先に承認者だけ決めます。
共有と保存まで決める
書き込んだ判断表は、申請する側と承認する側の両方が見られる場所に置きます。棚卸しの一覧は見直し用として手元に残します。保存先のフォルダ名と更新日を入れておくと、古い版が回る事故が減ります。
経費のように金額の基準を伴う書類は、承認の流れとあわせて社内ルールを文書にすると説明が楽になります。説明資料のまとめ方は経費精算ルールの社内説明資料を作る方法、保存の決め方は書類保存ルールを作る方法で整理しています。
うまく回らないときの戻し方
決めた流れが回らないときは、承認者を増やす前に止まった場所を見ます。止まる理由は、判断材料が足りないか、承認できる範囲から外れているかのどちらかに寄ります。
材料不足なら添付の指定を直し、範囲の問題なら承認者を変えます。それでも詰まる書類は、いったん元の流れへ戻して一つずつ試すほうが、現場の混乱が小さく済みます。
まとめ
承認フローを目的、日付、金額、承認者の順に決めると、誰が何を見るかが明確になります。書類名から考えると、新しい書式が増えるたびに作り直しになります。
この記事で決めたこと。
- 目的は条件提示、事実の記録、支払い依頼の三区分に分ける
- 日付と金額は、同じ人が見る場合でも先に見る順番を決める。担当を分けられるなら日付と金額で担当も分ける。最終の承認者は一人にする
- 完了は承認者の名前と承認日が記録に残っているかで判定する
次に確認すること
基準額が社内の規程で決まっていない場合は、暫定の基準をメモに残し、運用しながら固めます。
用途別の判断表の列に沿って、目的の区分と承認者を埋めます。一枚だけでも、承認者が見る欄が決まると確認待ちの時間が短くなります。差し戻しの多い一枚から、書き込んでください。
Q&A
条件提示・事実の記録・支払い依頼の3区分のうち、どれに当たるか判断しづらい書類はどう扱えばよいですか。
迷う場合は、その書類を受け取った相手が次に何をするかで判断すると整理しやすくなります。相手に返答を求めるなら条件提示、記録として残すだけなら事実の記録、入金や振込を依頼するなら支払い依頼として扱い、判断した理由も残しておくと次回以降の基準になります。
日付と金額の確認を分けるとき、担当を分けられない場合はどうすればよいですか。
担当を分けられない場合は、同じ人が確認する前提で確認順だけを分けておくと見落ちを防ぎやすくなります。日付を先に確認して期間や起算日を固め、その後に金額を確認する順序を決めておけば、一人でも二段階の確認として機能します。
添付不足のときに条件付き承認を選ぶ場合、何を記録しておけばよいですか。
条件付き承認にする場合は、不足している添付が何か、いつまでに提出してもらうか、提出されなかったときにどう扱うかを承認時点で記録しておきます。あわせて、その条件を誰が確認して解除するのかも決めておくと、承認したまま宙に浮く状態を避けられます。
著者
塩野谷 拓
2nd CORE代表。建設会社で7年間、総務・経理を中心とするバックオフィス実務を経験し、2022年に独立。
現在はフリーランスとして、一人社長・個人事業主を中心に、事務・経理代行、バックオフィス業務改善、Web制作を支援しています。現場で培った経験をもとに、実務で役立つバックオフィスの整え方を発信。

