経費の領収書、紙原本は捨てていい?電帳法での扱い
領収書の紙原本を捨てていいのか、電子帳簿保存法の話になると迷いますよね。 先に言うと、紙で受け取った領収書は、要件を満たすスキャナ保存に切り替えた場合に廃棄できます。逆に、条件を満たさないまま捨てると、あとから元の書類を出せません。受け取り方で分ける考え方、読み取り後に見る項目、社内で決めておく確認者まで、迷いやすい順番で整理します。
紙の領収書を捨てられるのは、スキャナ保存の要件を満たして読み取り、画像と紙を見比べて内容が同じだと確かめたあとです。入力期間を過ぎた場合は、原則として紙も残します。例外にあてはまるかどうかは国税庁の案内で確認してください。
先に結論
- 紙で受け取った領収書は、スキャナ保存の要件を満たして保存すれば、原本を捨てられます。
- 要件を満たさないままスキャンした画像は控え扱いになり、紙を残す必要があります。
- メールやWebで受け取った領収書は電子取引にあたり、データのまま保存するのが原則です。
- 捨てる前に見るのは、受け取り方、読み取りの品質、日付・金額・取引先で検索できる状態、確認者の4点です。
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紙の領収書を捨てられる場合と残す場合
紙で受け取った領収書は、スキャナ保存の要件を満たしたうえでデータを保存すれば、原本を廃棄できます。要件を満たさないまま捨てると、確認を求められたときに元の書類を出せなくなります。
迷いが生まれやすいのは、スキャンした時点で捨ててよいと受け取ってしまう場面です。国税庁の電子帳簿等保存制度の案内でも、保存方法ごとに求められる条件が分けて示されています。まずは自分がどの方法で保存しているかを確認します。
受け取り方で扱いが分かれる
最初の分かれ道は、その領収書を紙で受け取ったか、データで受け取ったかです。紙で受け取ったものは、紙のまま保存するか、スキャナ保存へ切り替えるかを選べます。データで受け取ったものは、そもそも紙が原本ではありません。
たとえば、店頭でもらったレシートは紙、通販サイトから落とした購入明細PDFはデータです。同じ経費でも入り口が違うので、ひとつの箱にまとめて考えると判断がぶれます。受け取り方でフォルダを分けるところから始めると整理しやすいです。
スキャナ保存に切り替えると原本を捨てられる
スキャナ保存は、紙の領収書を読み取って電子データとして保存する方法です。紙を捨てられるのは、次の3つがそろった後です。
- スキャナ保存の要件を満たしている
- 決められた入力期間内に読み取って保存している
- 読み取った画像と紙を見比べて、内容が同じだと確認している
ここでいう要件は、読み取りの品質、訂正や削除の記録の残り方、検索できる状態などです。入力期間を過ぎた場合は、原則として紙も残すことになります。期間を過ぎたときの取り扱いには例外もあるため、あてはまるかどうかは国税庁の案内で確認してください。画像が不鮮明で内容を読み取れないときも紙を残してください。入力期間の具体的な日数は取り扱いが細かいため、国税庁などの一次情報で確認してください。
国税庁の案内では、取引年月日、取引金額、取引先で検索できることが求められています。ファイル名を「20260401_12000_○○商店」のようにそろえておくと、専用システムがなくても運用しやすくなります。
紙のまま残す選択も残っている
スキャナ保存は義務ではなく、紙のまま保存を続けることもできます。枚数が少ない、担当者が一人、読み取りの手間が見合わない場合は、無理に切り替えない判断もあります。切り替えないなら、原本を捨てない前提で保管場所を決めます。
保存期間は、国税庁の案内では法人の帳簿書類が原則7年、欠損金の繰越控除を受ける事業年度は最長10年とされています。個人事業主は青色か白色か、消費税の扱いでも年数が変わるため、自分の区分で確認しておくと安心です。
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原本を捨てていいかを分ける判断基準
捨てていいかどうかは、受け取り方、読み取りの品質、検索できる状態、確認者の4つを別々に見ると決めやすくなります。金額の大小や書類の名前だけで決めると、原本を捨てたあとに取り返せない失敗が起きやすくなります。
領収書の原本を捨てる判断は、書類名ではなく受け取り方と保存状態の順で見ると迷いにくくなります。
日付と金額は別々に確認する
読み取り後に問題になりやすいのは、画像は残っているのに日付や金額が読めないケースです。日付は年をまたぐ経費の帰属に関わり、金額は消費税や経費の集計に関わります。確認するときは、この2つを分けて見ると抜けが減ります。
感熱紙のレシートは時間が経つと薄くなり、あとから読み直せないことがあります。読み取った直後に日付と金額を画面で読めるか確かめ、読めない場合は取り直します。取り直しても読めない紙は、捨てずに残す判断が無難です。
確認者と廃棄のタイミングを先に決める
誰が確認したら捨てていいのかが決まっていないと、現場は紙を捨てられません。確認する人、確認する項目、確認が終わったあとの廃棄時期を一度決めておきます。決まっていない状態が、そのまま確認待ちの山になります。
確認者と廃棄時期の決め方は、法令の要件ではなく社内で決める運用です。たとえば「経理が月次の締めで読み取り結果を確認し、確認済みの月の紙は翌月末に廃棄する」のように、日付で区切ると運用しやすくなります。確認の記録は、月次チェック表に日付と担当者名を残すだけでも足ります。捨てる判断を人の記憶に委ねず、誰が何を見ていつ捨てるかの手順に落とします。
原本を捨てたあとに気づきやすい失敗
同じ失敗は、だいたい決まった場所で起きます。原本を捨てたあとに気づくと戻せないので、先に並べておきます。
- 宛名や但し書きが違ったまま読み取り、あとで再発行を頼めなくなる
- 二重に読み取った画像が残り、同じ経費を二重に計上してしまう
- データで受け取った領収書を印刷して保存し、元のPDFを消してしまう
特に3つ目は、紙中心の運用から切り替えた直後に起きやすいです。受け取ったデータは、まず元の形のまま保存先へ置きます。
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保存方法別に見る紙原本の扱い
判断の軸は、紙のまま保存、スキャナ保存、電子取引データの3つです。自分の領収書がどこに入るかを決めてから、捨てるかどうかを考えます。
| 保存方法 | 紙原本の扱い | 先に確認すること | つまずきやすい点 |
|---|---|---|---|
| 紙のまま保存 | 捨てずに保管する | 保管場所と保存年数 | 置き場所が人ごとに分かれる |
| スキャナ保存 | 要件を満たせば廃棄できる | 読み取り品質、検索できる状態、確認者 | 入力期間を過ぎたまま紙を捨ててしまう |
| 電子取引データ | そもそも紙が原本ではない | データのままの保存先とファイル名 | 印刷した紙だけを残してしまう |
表の3行目は、紙を捨てる捨てない以前の話になります。メールやサイトから受け取った領収書は、データのまま保存するのが原則とされています。印刷した紙を残すかどうかは、社内の見やすさの都合として別に考えます。
この表は、正解を固定する道具ではなく、確認順をそろえる道具です。迷ったときは表を左から右へ読み、確認が済んでいない行は廃棄を保留します。ここで分けてから、保存先、ファイル名、検索方法、削除防止のルールを決めます。
受け取り方ごとに保存先を決める
メール添付のPDF請求書や領収書は、添付ファイルそのものを社内の保存先へ移します。印刷して経理ファイルへ綴じること自体は妨げられませんが、印刷した紙だけでは電子取引データの保存になりません。振込先や対象期間がメール本文や件名だけに書かれている場合は、受信メールも保存し、後から検索できる状態にします。
Webサイトから領収書や利用明細をダウンロードする取引では、発行元のサイトでいつでも再取得できるとは限りません。月次処理のたびにダウンロードし、日付、取引先、金額、書類種別が分かる名前で保存します。画面表示の控えだけで済ませるより、発行されたPDFやCSVなど取引内容を確認できる元データを残すほうが安心です。
クラウドの請求書サービスや、EDI(取引先と専用の仕組みでデータをやり取りする方法)で受け取る取引データは、サービス内にあるから安心と考えないようにします。退職や契約変更、権限変更があっても見られるかを確認します。社内で控えも保存する運用にする場合は、どちらを正として確認するかを先に決めます。
紙で受け取った領収書をスマートフォンで撮影して共有する運用は、社内確認には便利です。ただし、紙を捨てる前提にするならスキャナ保存の扱いになります。まず決めるのは、電子で届いたものと紙で届いたものを混ぜないこと、そして紙原本を残す運用かスキャナ保存へ切り替える運用かです。
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制度や期限があるときの確認順
制度が関わる判断では、対象になる範囲、確認の期限、相談先と記録の3つを分けると、社内で話が進みやすくなります。全部を一度に決めようとせず、順番に片づけます。
対象になる範囲を分ける
最初に決めるのは、どの書類から手をつけるかです。経費の領収書だけなのか、請求書や納品書も含めるのかで、準備の量が変わります。枚数が多い領収書だけに絞ると始めやすいです。
範囲を決めたら、担当者と対象期間をメモに書きます。範囲が曖昧なまま始めると、古い紙まで捨ててよいのか毎回止まります。
確認の期限から逆算する
切り替えの判断は、決算や月次の締めから逆算すると決めやすくなります。締めの前に読み取りと確認を終える日を置き、その後ろに廃棄日を置きます。日付が並ぶと、誰が何をいつ見るかが一目で分かります。
たとえば月次なら、読み取りは受け取った週のうち、確認は締め日、廃棄は翌月末という並びです。実際の日付は社内の締め日に合わせて動かします。
相談先と記録を残す
制度の細かい条件は、税務署や顧問の税理士に確認するのが確実です。確認したら、聞いた日、聞いた相手、回答の要点を1行で残します。受け取った請求書や領収書を決められた形で保存しておく点は、消費税の計算に使う書類の管理でも同じ流れです。受け取り側の整理はインボイスの保存要件、受け取り側が押さえる管理ルールでも扱っています。
まとめ
紙の領収書を捨てていいかは、受け取り方、読み取りの品質、検索できる状態、確認者の順で見ると決まります。スキャナ保存の要件を満たして保存していれば原本を捨てられますし、満たしていなければ紙を残します。
- 紙で受け取った領収書は、要件を満たすスキャナ保存にすれば廃棄できる
- 読み取り後に日付と金額を確認し、読めない紙は捨てずに残す
- データで受け取った領収書は、元のデータのまま保存先に置く
次に確認すること
まずは今月の経費の領収書を、紙・メール添付・サイトからのダウンロードの3つに分けてみます。枚数がいちばん多かったグループが、いちばん効果の出る整理対象です。
次に、読み取り後の確認者と廃棄の時期を1行で書き、チェック表に日付欄を足します。この2つが決まれば、次に領収書を手にしたとき、捨てるかどうかをその場で判断できます。制度面で不安が残る項目だけ、税務署か税理士に確認する形にすると進めやすいです。
参考情報
Q&A
メールで届いた請求書は印刷して保存すれば足りますか?
最低限は、印刷した紙だけで終わらせず、メール添付PDFや取引内容が分かるメールを電子データとして残します。後から日付、金額、取引先で探せる保存先とファイル名にしておくと確認しやすくなります。
紙で受け取った領収書も必ず電子化する必要がありますか?
紙で受け取った書類は、まず紙の原本を保管する運用で整理できます。紙をスキャンして原本を捨てる運用にする場合は、スキャナ保存の要件を別に確認してから進めます。
最低限どんな状態で保存しておけばよいですか?
保存先を固定し、日付、金額、取引先で検索でき、保存期間中に削除されない状態にします。担当者が変わっても開ける権限と、クラウドやメール内のデータを確認できる手順も残しておくと安全です。
著者
塩野谷 拓
2nd CORE代表。建設会社で7年間、総務・経理を中心とするバックオフィス実務を経験し、2022年に独立。
現在はフリーランスとして、一人社長・個人事業主を中心に、事務・経理代行、バックオフィス業務改善、Web制作を支援しています。現場で培った経験をもとに、実務で役立つバックオフィスの整え方を発信。
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