経営者が何から外注するか迷うとき、最初の一歩を間違えると余計な確認作業が増えてしまいますよね。 忙しい時期ほど「とにかく手放したい」と思いがちです。しかし業務名だけで選ぶと、かえって指示や確認のやり取りが増えることもあります。本記事のテーマは「まず何を手放す?」です。忙しい経営者が最初に外注すべき業務を取り上げます。目的・頻度・金額・確認者という4つの軸から、最初に手放しやすい業務の見分け方を整理します。読み終える頃には、自分の会社で最初に外注する候補を1つ選べているはずです。
最初に外注しやすいのは、判断の余地が少なく手順が決まっている業務です。まずは外へ渡す作業と、社内に残す確認を分けて見ます。
- 業務名で選ぶより、目的・頻度・金額の大きさで切り出す範囲を決めると迷いにくくなります。
- 確認者を依頼前に決めておくことが、差し戻しを減らす近道です。
- 経営判断を伴う業務は、最初の外注対象から外しておくのが安心です。
外注を何から始めるか迷う場面の基本整理
外注を何から始めるかは、業務名では決められません。ここでは前提として、手放す目的・依頼するタイミング・相手に求める行動の3点を押さえます。手放す目的と依頼するタイミングは、次章の「目的」の軸を具体化する材料です。相手に求める行動は、「確認者」の軸を具体化する材料です。
目的の違い
外注を考えるとき、まず見るのは「何のために手放すのか」という目的です。時間を作りたいのか、専門知識が足りないのか、属人化を防ぎたいのかで、頼む相手も切り出し方も変わってきます。
経理の入力作業なら、時間を作る目的がほとんどです。契約書の確認や制度対応は専門知識を借りる目的が強く、社内に残す判断と外部に頼む判断が分かれやすくなります。
タイミングの違い
外注するタイミングは、忙しくなってから慌てて探すケースと、事業が広がる前に準備しておくケースの2つに分かれます。前者は急場をしのぐ目的が強く、後者は仕組みを整える目的が強くなります。
急ぎの場合は、今の業務量を圧迫している作業を1つ選び、そこから手放すほうが現実的です。余裕があるうちなら、定型業務から順に切り出して、担当者が増えても回る形を先に作っておくと安心です。
相手に求める行動の違い
外注先に何を求めるかも、業務ごとに違います。作業だけを代わりにやってほしい場合と、判断まで含めて任せたい場合では、依頼の仕方も確認の頻度も変わってきます。
手順書を渡すだけで進められるのが、作業代行の特徴です。判断を含む依頼では、どこまで相手に決めてもらうかを先に線引きしておきましょう。線引きが曖昧だと、後から「そこは確認してほしかった」という差し戻しが起きやすくなります。
最初に手放す業務の判断基準
最初に手放す業務を選ぶときは、業務名で区切らないことが出発点です。目的・頻度・金額の大きさ・確認者を別々に見ると、差し戻しや確認待ちを減らせます。
業務名ではなく目的を見る
「経理」「総務」とひとまとめにすると、外注の判断がぼやけます。同じ経理業務でも、請求書の入力作業と支払い先の交渉では、必要な権限も確認の深さもまったく違います。
業務を分けるときは、まず「この作業は何のために行っているか」を書き出すところから始めましょう。目的が記録を残すことなら外注しやすく、経営の方針を決めることに近いなら、最初の外注対象からは外しておくのが安心です。
頻度と金額を別々に見る
頻度が高く金額が小さい業務は、手順を一度決めてしまえば外注しやすい領域です。頻度が低くても金額が大きい業務は、ミスの影響が大きいため、確認工程を残したまま一部だけ切り出すほうが無難です。
日々の経費精算は、頻度が高く1件あたりの金額は小さいという特徴があります。そのため、外注の候補として扱いやすい業務です。大口の支払い先への対応は頻度が低くても影響が大きいので、しばらくは社内でチェックする工程を残しておくと安心です。
確認者を先に決める
外注を始めるときに決めずに進めがちなのが、「最終的に誰が確認するか」です。確認者を決めないまま進めると、結果だけ受け取って誰も中身を見ていない状態になりやすく、ミスに気づくのが遅れます。
最初の依頼では、完成した成果物を誰が、いつ、どの項目で確認するかを一文にしておきましょう。それを相手に伝えておくと、後からのやり取りが減ります。確認者を依頼前に決めておく効果は、急に外注を決めた場面ほど大きくなります。確認者を先に決める考え方については、「経理の人が辞めた」急場をしのぐ外注の使い方でも具体的に触れました。
対応範囲のズレを防ぐ
依頼する前に「どこまでやってもらえるか」を書面で一行決めておくことをおすすめします。依頼した側と外注先で任せる範囲の認識がズレると、後から「そこは確認してほしかった」という差し戻しが増えてしまうからです。
電子帳簿保存法のような制度対応を外注する場合も同じです。どこまでを相手に任せ、どこから社内で判断するかを、先に分けておきましょう。「電子帳簿保存法の対応」自社でやる?専門家に頼む?でも触れていますが、制度対応は範囲を区切るほど外注しやすくなります。
- 業務名ではなく、記録・入力・交渉・判断のどれに近いかで分ける
- 頻度が高く金額が小さい業務から外注の候補にする
- 最終確認者を、依頼の時点で一文にして相手に伝える
- 対応範囲は「どこまで」を先に区切っておく
業務タイプ別の判断フレーム
目的・頻度・金額・確認者の4つの軸で切り出す範囲を決めたら、次は「どの業務から選ぶか」です。手順がどこまで決まっているかと、判断の重さを見ます。この基準で、業務を定型業務、記録・入力業務、専門知識が必要な業務、経営判断を伴う業務の4種類に分けます。
定型業務は外注しやすい
手順がすでに決まっていて判断の余地が少ない業務は、最初の外注対象として扱いやすい領域です。請求書の発行、経費精算の入力、スケジュールの調整などが当てはまります。
請求書の発行や経費精算の入力のような定型業務は、手順書と記入例を渡しておけば済みます。担当者が変わっても、同じ結果になりやすいです。迷ったら、まず定型業務から1つ選んで試すのが現実的な進め方です。
記録・入力業務は切り出しやすい
事実をそのまま記録する業務も、外注しやすい部類に入ります。勤怠の集計や取引の入力、資料の整理などは、判断よりも正確さが求められる作業だからです。
入力元の情報が不足していると、外注先が確認のために社内へ何度も問い合わせることになります。渡す資料を先に揃えておくと、やり取りの回数が減ります。
専門知識が必要な業務は調査と下準備だけ切り出す
電子帳簿保存法やインボイス制度のような制度対応は、法律や要件の理解が必要になることが多いです。そのため、最初から全体を渡すと社内の判断が追いつかなくなります。調査と下準備の部分だけを先に外注する進め方をおすすめします。専門知識を持つ担当者が社内にいない場合でも、確認すべき論点を先に整理できるからです。
具体的には、制度の要件整理、必要書類の洗い出し、社内で判断が必要な論点のリストアップまでを外注先に任せます。最終的な対応方針の決定は社内に残しましょう。この線引きをしておくと、専門知識が必要な業務でも、最初の一歩を外に出しやすくなります。
経営判断を伴う業務は残す
取引先との条件交渉や人事の評価、資金繰りの方針といった経営の判断が入る業務もあります。こうした業務は、最初の外注対象からは外しておくのが無難です。外部に任せると責任の所在が曖昧になりやすいからです。
任せるとしても、まずは情報を整理する部分だけを外注し、最終判断は社内に残す形から始めると、無理なく進められます。
| 業務タイプ | 特徴 | 外注のしやすさ | 最初に頼む範囲 |
|---|---|---|---|
| 定型業務 | 手順が決まっている | 高い | 作業全体 |
| 記録・入力業務 | 事実を記録するだけ | 高い | 入力・集計部分 |
| 専門知識が必要な業務 | 制度や法律が関わる | 中程度 | 調査・下準備 |
| 経営判断を伴う業務 | 責任の所在が重い | 低い | 情報整理のみ |
- 定型業務と記録・入力業務は最初の外注候補にしやすい
- 専門知識が必要な業務は、調査や下準備から任せると始めやすい
- 経営判断を伴う業務は、情報整理だけを切り出し、最終判断は残す
まとめ
経営者が外注を何から始めるか迷うときは、業務名で判断しないことが出発点です。目的・頻度・金額・確認者という4つの軸で見ると判断しやすくなります。急ぎか準備かというタイミングと、作業だけ任せるか判断まで任せるかの線引きも、最初の1件を選ぶ段階で決めておきます。最初の業務は、定型業務や記録・入力業務から選ぶのがおすすめです。差し戻しの少ない形で、外注を始められます。
経営判断を伴う業務は、急いで渡さないほうが無難です。情報整理の部分だけを任せるところから試すと、無理のない範囲で外注を広げていけるからです。
次に確認すること
まずは、今の業務の中で確認待ちや差し戻しが多い作業を1つ選んでみます。その作業が4種類のどれに近いかを確認します。確認には、本文の「業務タイプ別の判断フレーム」にある表(業務タイプ・特徴・外注のしやすさ・最初に頼む範囲の表)を使います。4種類とは、定型業務、記録・入力業務、専門知識が必要な業務、経営判断を伴う業務です。
当てはめた結果、定型業務や記録・入力業務に近いなら、最初の外注候補として扱いやすい業務です。確認者とどこまでの範囲を任せるかを一文にまとめてから、外注先への相談を始めると、やり取りの手間を抑えられます。
Q&A
忙しくて何から外注するか決められません。最初の1件はどう選べばいいですか。
まずは今の業務のうち、確認待ちや差し戻しが多い作業を1つ選び、本文の業務タイプ別の表に当てはめてみてください。定型業務や記録・入力業務に近いなら、最初の外注候補として扱いやすい業務です。請求書の発行や経費精算の入力のように、頻度が高く金額が小さい作業から試すと進めやすくなります。
経営判断が入る業務も、忙しいうちに外注してしまって大丈夫でしょうか。
取引先との条件交渉や人事の評価、資金繰りの方針といった業務は、最初の外注対象から外しておくほうが無難です。外部に任せると責任の所在が曖昧になりやすいためです。どうしても手が回らない場合は、情報を整理する部分だけを切り出して任せ、最終判断は社内に残す形から始めてみてください。
どこまで任せるかの範囲は、どう決めておけばいいですか。
依頼する前に「どこまでやってもらえるか」を書面で一行決めておくことをおすすめします。あわせて、完成した成果物を誰が、いつ、どの項目で確認するかを一文にまとめ、相手に伝えておくと後からのやり取りが減ります。電子帳簿保存法のような制度対応でも、調査や下準備だけを任せて判断は社内に残すなど、範囲を区切るほど外注しやすくなります。
著者
塩野谷 拓
2nd CORE代表。建設会社で7年間、総務・経理を中心とするバックオフィス実務を経験し、2022年に独立。
現在はフリーランスとして、一人社長・個人事業主を中心に、事務・経理代行、バックオフィス業務改善、Web制作を支援しています。現場で培った経験をもとに、実務で役立つバックオフィスの整え方を発信。

