経費精算で領収書とレシートどちらを提出すればいいか、毎回手が止まることはありませんか?
提出する直前になって、やっぱり迷ってしまう人は多いはずです。手が止まる原因は、呼び方ではなく書類に書かれている内容にあります。書かれている情報量で、経費として使えるかが決まるからです。このあと『用途別に見る領収書とレシートの選び方』の章で、判断基準を場面別に確認していきます。分けるのは、日常の支払い・宛名が必要な支払い・高額な一括購入の3つの場面です。
領収書とレシートは、名称ではなく書かれている情報量で経費の証拠になるかが決まります。発行者名・日付・金額・取引内容の4点を、毎回同じ順番で確認してください。
まずは結論を箇条書きでまとめました。細かい理由は、このあとの『判断軸として見る共通ポイント』の章で一つずつ確認していきます。
- レシートでも発行者名・日付・金額・取引内容が記載されていれば、経費精算にそのまま使える場合が多いです。
- 国税庁の案内では、小売業や飲食店業、タクシー業などは、宛名を省いた簡易な書式を使えます。これは、インボイス制度の適格簡易請求書と呼ばれるものです。この簡易な書式でも、支払った消費税を会社の納税額から差し引く手続き(仕入税額控除)に使える書類として認められています。
- 領収書をお願いするのは、宛名や但し書きが必要な支払いと、高額な一括購入のときと決めておくと迷いにくいです。
- 差し戻しを防ぐには、受け取った書類の記載内容を提出前に一度確認する習慣をつけておくと安心です。
領収書とレシートが生まれる場面の違い
領収書は受け取る側がお願いしてから発行してもらう書類、レシートは購入時にレジから自動で出る書類です。ここが、生まれる場面の違いです。どちらも経費の証拠になり得ます。
発行目的の違い
レシートは購入した事実をレジが自動で記録した書類で、領収書は受け取る側が依頼して発行してもらう書類です。
コンビニでの買い物はレシートがそのまま証拠になりますが、取引先への謝礼など宛名が必要な場面では領収書を頼むのが自然です。
受け取るタイミングの違い
レシートは会計の瞬間に自動で出るのに対し、領収書は代金を払った後にお願いして発行してもらう流れになります。
多くの店では、レシートと引き換えに領収書を発行します。そのため会計時にレシートを受け取らないと、後から領収書を頼めないことがあります。レシートは会計のその場で、必ず受け取ってください。
相手に求める行動の違い
レシートは店側のいつもの処理だけで済みますが、領収書は宛名や但し書きなど、相手に追加の手間をお願いする書類です。
但し書きを「お品代」で済ませず、実際に購入した内容を伝えておくと、後からの確認や差し戻しを避けやすくなります。
判断軸として見る共通ポイント
領収書とレシートのどちらを提出する場合でも、差し戻しを減らす鍵があります。それは、発行者、日付、金額、取引内容の4点を同じ順番で確認することです。
発行者と宛名の書き方
発行者の名称が書かれているかを最初に確認し、宛名が必要な場面では相手にお願いして書いてもらいます。
宛名を「上様」で済ませると、経理担当者が後からどの会社・どの部署の支払いかを確認できない場合があります。会計の前に自社の正式名称を伝えておくと、書き直しの手間を防げます。
日付と金額の書き方
日付は支払った日と一致しているかを確認し、金額は税込・税抜どちらで書かれているかを分けて見ます。
レシートは税率ごとの金額が自動で分かれて印字されるため、複数税率の買い物でもそのまま使いやすいです。
取引内容と税率の書き方
国税庁の案内では、取引内容は品目が分かる形で書くことが求められます。軽減税率(飲食料品などにかかる8%の税率)の対象が混ざる場合は、税率ごとに分けて記載します。
レシートはレジのシステムが税率ごとに自動で振り分けてくれるため、記載ミスを防ぎやすい書類です。
- 発行者の名称と宛名が、依頼内容に合わせて正しく書かれているか確認します。
- 日付が支払日と一致し、金額が税込・税抜どちらで書かれているかを分けて見ます。
- 取引内容については、品目まで分かる形で書かれているかを確認してください。軽減税率の対象が混ざる場合は、税率ごとに分けて記載されているかも見ておきましょう。
- 宛名を省ける業種(適格簡易請求書が使える小売業・飲食店業・タクシー業など)かどうかで、宛名の有無を判断します。
用途別に見る領収書とレシートの選び方
領収書とレシートの選び方は、日常の支払いか、宛名が必要な支払いか、高額な一括購入かで分けると迷いにくくなります。
小売・飲食・タクシーなど日常の支払い
小売店や飲食店、タクシーなど日常的な支払いでは、レシートに記載された内容だけで経費精算に使える場面が多いです。
国税庁の案内でも、こうした業種は宛名を省いた簡易な書式が認められています。社内の経費精算としては、発行者名・日付・金額・取引内容の4点がそろっていればそのまま提出して問題ありません。
登録番号(Tから始まる13桁)の有無は、経理が消費税の控除を判断する材料です。自分で判断せず、受け取ったレシートはそのまま経理へ渡してください。
取引先への支払いや贈答
取引先への謝礼や贈答など、宛名が必要になる場面では、領収書の発行を依頼するのが自然な流れです。見積書や請求書との役割の違いが気になる場合は、見積書と請求書と納品書、何が違う?役割と使い分けが一目でわかる早見表も参考になります。
依頼するときは、正式名称と但し書きの内容を一言添えておくと、後から確認される手間を減らせます。
高額な一括購入や法人名義の支払い
まとまった金額を法人名義で支払った場面では、領収書だけでなく購入明細が分かるレシートも一緒に残しておくと安心です。
領収書に購入明細のレシートをホチキス留めし、支払日と件名を書き添えて保管する方法をおすすめします。後から内容を聞かれても、すぐ説明できるからです。
領収書とレシートを比較する早見表
次の表で、発行タイミング・記載内容の違い・使い分けの目安をまとめて確認できます。
| 比較する点 | 領収書 | レシート |
|---|---|---|
| 発行タイミング | 支払いの後に、受け取る側が発行をお願いして作成してもらう | 会計のその場で、レジや券売機から自動的に発行される |
| 記載される内容の違い | 宛名や但し書きを、依頼内容に応じて書き分けてもらえる | 商品名と税率ごとの金額が、自動で明細に残る |
| 使い分けの目安 | 宛名が必要な取引先への支払いや贈答で依頼する | 日常的な小売店や飲食店、タクシーの支払いでそのまま使う |
差し戻しが起きやすい誤用
差し戻しが起きやすい誤用は、宛名のずれ、添付資料の不足、確認範囲のあいまいさの3つに集中しています。
宛名と対象がずれる
宛名が自分の会社名と違う、または対象の取引と金額が一致しないまま提出すると、確認のやり直しが発生しやすいです。
受け取った直後に、宛名が自社名と一致しているか、金額が実際に支払った額と合っているかを確かめます。但し書きが「お品代」のような曖昧な表記になっていないかも確認しておくと、提出前に気づきやすくなります。
添付資料が足りない
レシートだけでは取引内容が分かりにくい場合、何を購入したかのメモを添えないと、後から用途を聞かれることがあります。
購入した直後にメモを一行残しておくと、後日の確認をスムーズに進められます。
確認範囲が曖昧になる
誰が最終的に内容を確認するかを決めずに提出すると、担当者ごとに判断がばらつき、差し戻しの原因になります。
確認する担当者を先に決めておくと、同じ基準で経費精算を進めやすくなります。
- 宛名と提出先の会社名が一致しているか確認する。
- 購入内容が分かるメモやレシートが添付されているか確認する。
- 最終的に内容を確認する担当者を決めておく。
まとめ
結局、領収書とレシートはどちらが正解なのか、気になりますよね?答えは、書かれている情報が整っていればどちらも経費の証拠として使えるというものです。
発行者、日付、金額、取引内容の4点を同じ順番で確認しておけば、書類の名称にとらわれず経費精算を進めやすくなります。
次に確認すること
まずは直近で受け取った領収書やレシートを並べて、発行者名、日付、金額、取引内容の4点を見比べてみましょう。記載が整っているかを確認しておくと、次に受け取ったときの判断がぐっと楽になります。
自分の事業が消費税を納める課税事業者か、免除される免税事業者かも、合わせて確認しておくと安心です。「課税事業者と免税事業者の違い」自分はどっちか30秒で判定で確かめておきましょう。
参考情報
Q&A
レシートをそのまま経費精算に出しても大丈夫ですか。
発行者名・日付・金額・取引内容の4点がそろっているレシートであれば、そのまま経費精算に使える場面が多いです。小売店や飲食店、タクシーなど日常の支払いは、受け取ったレシートに必要な記載が入っていることがよくあります。まずは手元のレシートを見て、この4点が読み取れるかを確かめてみてください。
レシートが出たあとに、あえて領収書をお願いしたほうがよいのはどんなときですか。
宛名や但し書きが必要な支払いでは、レシートではなく領収書をお願いしてください。高額な一括購入や法人名義の支払いのときは、領収書と、購入した内容の明細が分かるレシートの両方を一緒に残しておくと安心です。どちらか一方を捨ててしまわないように、その場でまとめて保管しておきましょう。
登録番号が書かれていないレシートは、自分で外しておいたほうがよいですか。
自分で判断して除外せず、受け取ったレシートはそのまま経理へ渡してください。登録番号の有無は、経理が消費税の控除を判断するための材料になります。取り扱いに迷う場合は、公的な情報や専門家にも確認しておくと確実です。
著者
塩野谷 拓
2nd CORE代表。建設会社で7年間、総務・経理を中心とするバックオフィス実務を経験し、2022年に独立。
現在はフリーランスとして、一人社長・個人事業主を中心に、事務・経理代行、バックオフィス業務改善、Web制作を支援しています。現場で培った経験をもとに、実務で役立つバックオフィスの整え方を発信。

