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新人が育つチェックリスト式OJTの作り方

新人が育つチェックリスト式OJTの作り方

OJTチェックリストを事務職向けに作りたいとき、何を基準に項目を決めればよいか迷いますよね。 その迷いをそのままにしておくと、指導担当によって教える内容や順番までバラバラになってしまいます。目的・タイミング・新人に求める行動という3つの視点を順番に見ていきます。読み終えるころには、自分の職場に合わせたチェックリストの骨格が見えてくるはずです。

OJTチェックリストは「何を教えたか」ではなく「何ができるようになったか」を基準に項目を作ります。まずは目的、タイミング、新人に求める行動の3つに分けて項目を決めます。

  • 知識・実技・定着の3段階に分け、新人の習熟度に応じたチェック項目を組み立てるのが基本です。
  • 項目ごとに完了日と確認者を記録します。最後に誰が合格と判断するかを先に決めておくと、いったん合格にした項目をやり直す手戻り(差し戻し)を減らせます。
  • チェックリストは一度作って終わりにせず、つまずきが多かった項目をもとに定期的に見直す運用にしましょう。

OJTチェックリストの項目を決める3つの軸

事務職向けのOJTチェックリストを作るときは、作業名だけで項目を決めません。目的、タイミング、新人に求める行動で項目を分けると、判断しやすくなります。項目を並べる前に、この3つの軸をそろえておきましょう。担当者が変わっても同じ基準で進められる分、チェックリストが我流になるのを防げます。

目的の違い

チェックリストの目的は、新人の進捗を記録することと、指導担当の教え漏れを防ぐことの2つに分かれます。この2つを混ぜたまま項目を作ると、「確認のための確認」が増えて、新人も担当者も疲れてしまいます。項目の数を絞るには、まずどちらを主目的にするかを言葉にしておくことが先です。

記録目的なら、完了日と確認者(その項目を確認した人の氏名)を残す欄を優先します。教え漏れ防止目的なら、作業の抜け漏れを洗い出す欄を優先します。両方を一度に満たそうとせず、まずは主目的を1つに決めてから項目を組み立てるとスムーズです。慣れてきたら、もう一方の目的も少しずつ欄に足していけます。

タイミングの違い

同じ事務作業でも、入社直後に確認する項目と、独り立ち前に確認する項目は別物です。入社直後は手順を覚えたかどうかを見て、独り立ち前はミスなく一人で終えられるかどうかを見ます。入社直後と独り立ち前で見る基準が違うことに気づかず、同じ基準で見てしまうと、新人への評価がぶれやすくなります。

そこで、1枚のチェックリストの中に2ブロックを用意するとよいでしょう。「入社1か月まで」と「入社3か月まで(独り立ち前)」の2つです。ブロックごとに合格の基準を書いておけば、新人の進捗を段階的に追えます。区切りをそろえておけば、つまずいた段階を後から振り返る材料になります。

新人に求める行動の違い

チェック項目によって、新人に求める行動は「説明できる」「実際にできる」「人に教えられる」の3段階に分かれます。この違いをそろえずに並べると、実際にはできないのに「説明できたから合格」にしてしまう場面が出てきます。合格の基準があいまいなままだと、後から『どの基準で合格にしたのか』を問われたときに説明できません。

項目の文末は「〜を説明できる」「〜を一人で実行できる」「〜を人に教えられる」の3種類から選びます。どの項目も動詞で言い切る形に統一します。この3種類のどれを選ぶかをあらかじめ決めておけば、確認する担当者が変わっても合格の基準がぶれません。文末をそろえる作業は手間に見えますが、後からの差し戻しを減らす近道です。

運用を始める前に決める4つのこと

ここからは項目の分類ではなく、運用の決めごとを4つ扱います。1つ目は、項目をどこまで具体的に書くかです。2つ目は、完了日と確認者をどう分けて記録するかです。3つ目では、最終承認者を誰にするかを先に決めます。4つ目は、対象範囲をどこまでにするかです。順番に見ていきましょう。

項目は作業名ではなく合格基準で書く

「請求書を作る」のような作業名だけの項目は、できたかどうかの基準があいまいになりやすいです。チェックリストを作る担当者は、項目の後ろに合格の条件を足します。「請求書を作成し、金額と宛先の見直しまで一人で実行できる」まで書いておきましょう。そうすれば、確認する指導担当も合格かどうかを判断しやすくなります。作業名だけの項目は、見た目は簡単そうでも実際の確認が難しくなりがちです。

作業名だけの項目が並んでいるチェックリストを見直すときは、各項目の後ろに「何ができれば合格か」を一言足してみます。始めはやりにくく感じても、使う頻度の高い項目から直していけば、一度に全部書き直す必要はありません。

完了日と確認者を分けて記録する

完了日だけを埋める運用だと、誰が確認したのか後から分からなくなります。完了日の欄と確認者の欄を分けておくと、担当者が休んだときも引き継ぎがしやすいです。確認者の欄には、その項目を自己評価した本人と、確認・承認した人の氏名と役割を残します。完了日の欄と確認者の欄を分けておけば、担当者が変わってもどこまで終わっているかをすぐ把握できます。確認方法については別の欄を用意し、「指導担当が横で1件確認」のように記しておきましょう。

確認者の欄は2段に分けます。1段目は本人の自己評価(氏名)、2段目は確認した指導担当または最終承認者の氏名です。指導担当の判断だけで進める項目は指導担当の氏名を、最終承認者の確認が必要な項目は最終承認者の氏名を2段目に書きます。自己評価だけで合格にしてしまうと、実際には整っていない項目が残ります。そのぶん入力の手間はかかりますが、2段階の確認が後の差し戻しを防いでくれます。

承認者を先に決めておく

チェックリストを運用し始めてから「最終的に誰が合格と判断するのか」で揉める職場は少なくありません。指導担当は日々の確認を担い、最終承認者は指導担当とは別の上司などに決めておきます。決めずに走り出すと、合格の基準が人によって変わってしまいます。

最終承認者は、1人に絞るのが得策です。誰の判断で合格にしたのかを、後から追えるようにするためです。そのうえで、指導担当の判断だけで先に進めてよい項目と、最終承認者の確認が必要な項目を分けておきます。線引きをしておけば確認待ちの時間が減り、最終承認者が忙しいときでも指導担当の判断で進められる項目が残ります。

対象範囲がずれると差し戻しが増える

チェックリストの対象範囲は、部署全体の事務作業なのか、新人が担当する範囲だけなのかでずれやすいところです。範囲が合っていないと、新人が覚えなくてよい作業まで確認対象に入ってしまいます。対象が広すぎれば、新人も指導担当も確認作業に時間を取られてしまいます。

担当外の項目まで合格にしてしまうと、あとから範囲の誤りが分かったとき、確認済みの項目のやり直しが避けられません。対象範囲は、新人が実際に担当する業務の一覧と照らし合わせて決めるのが基本です。担当外の項目が混ざっていたら、その場で削るか別のチェックリストへ移します。見直しのタイミングで対象がずれていないか確認する習慣をつけておくと安心です。

知識・実技・定着で分ける確認順の表

次の表は、知識・実技・定着の3段階と確認方法を対応させたものです。事務職向けのOJTチェックリストでは、新人に求める段階をこの3つに分けると、項目ごとの確認方法が決めやすくなります。

段階求める行動確認方法合格の目安
知識手順を説明できる口頭で説明させる手順を自分の言葉で言える
実技一人で作業できる実際にやらせて見る指導担当が横で見てミスがない
定着人に教えられる後輩や新しい担当者に説明させる説明を聞いた相手が同じ手順で動ける

職場の業務内容に合わせて、表の項目名を入れ替えて使えます。知識の確認だけで合格にしてしまうと、実際の作業でつまずくことが多いです。実技まで確認してから、次の項目へ進む順番にしておくと安心です。新人が落ち着いてきた時期に、定着の確認をまとめて行うとよいでしょう。

知識の確認で見る項目

マニュアルの手順や社内ルールを覚えているかどうかは、口頭での説明で確認します。資料を見ながらでもよいか、資料なしで説明できる必要があるかを、項目ごとに決めておきます。基準を決めておけば、確認する担当者が変わっても評価がぶれません。

実技の確認で見る項目

実技の確認では、指導担当が横で見てミスがないことを合格の目安にします。実際に作業をさせて、手順や入力内容に誤りがないかをその場で確認しましょう。さらに独り立ち前には、指導担当が見ていない状態でも一度試してもらうと、本当に一人でできるかが分かります。見ていない状態の確認を省くと、独り立ち後にミスが見つかる場合があります。

定着の確認で見る項目

作業に慣れたあとは、別の新人や後輩に説明させてみると、理解の深さが分かります。説明を聞いた相手が実際に同じ手順で動けるかどうかまで見ておくと、独り立ちの判断材料になります。教える側に回ることは、新人自身の理解を整理するよい機会です。


実務で進める順番

チェックリストを作るときは、準備、作成、確認、共有の順に分けると、担当者が変わっても進めやすくなります。初めて作る場合も、この順番で進めると迷いにくいです。順番を決めておくだけで、作業の途中で止まりにくくなります。

準備するものをそろえる

最初に、新人が担当する業務の一覧と、既存のマニュアルや手順書をそろえます。マニュアルがない作業は、業務一覧を作る時点で「作りながら整理する項目」として別にメモしておきます。入社時にそろえる書類も、同じ準備の工程で一緒に確認しておけば、後から確認し直す手間を省けます。入社時の書類を見るときは、「人事部の労務書類」入社時に揃える書類チェックリストも合わせて確認しておくとスムーズです。

業務一覧がないまま項目を作り始めると、後から漏れに気づいて項目の作り直しが発生しやすくなります。先に一覧を作る時間を取っておくと、後工程がスムーズです。一覧作りに時間がかかる場合は、よく使う業務だけ先に出して、残りは運用しながら足していく方法もあります。

項目を書き出して並べる

準備した業務一覧をもとに、1行ずつ項目を書き出します。項目の文末は「〜を説明できる」「〜を一人で実行できる」「〜を人に教えられる」の3種類から選びます。動詞で言い切る形に統一するのが基本です。

項目を書き出す段階で、知識・実技・定着のどの段階を確認する項目かも決めておきましょう。「入社1か月まで」「独り立ち前」のブロックに分けて並べると、後から見返しやすくなります。

作成後に確認する

チェックリストの案ができたら、実際にその業務を担当している先輩社員に見てもらいます。作った人だけでは気づかない抜け漏れや、言葉のあいまいさが見つかりやすいです。第三者の目を通すだけで、項目の精度はかなり上がります。

項目の設計が甘い箇所を見つけるには、1項目を実際に記入してみて、欄が最後まで埋まるかを確かめます。表の4列(段階・求める行動・確認方法・合格の目安)に、記録用の「完了日」「確認者」を足した形で1項目を書いてみましょう。作業名は「求める行動」の欄にまとめて書き込みます。段階の欄には「実技」、求める行動の欄には「請求書を作成し、金額と宛先の見直しまで一人で実行できる」と記入します。確認方法の欄には「指導担当が横で1件確認する」と書き、合格の目安の欄には「指導担当が見てミスがない」と記します。完了日の欄には「6月10日」と記入します。確認者の欄には、1段目に「本人(自己評価)」、2段目に「指導担当・鈴木(確認)」と記入します。完了日と確認者の2欄は、記入のときに実際の日付と氏名へ差し替えてください。見直す中で埋まらない項目が出てきたら、その場で文言を調整します。

共有と保存まで決める

完成したチェックリストは、新人と指導担当の両方が見られる場所に保存します。紙の場合は原本の保管者を決めておきます。データの場合は、更新履歴が分かる保存方法にしておくと安心です。後から探す手間も減ります。

つまずきが多かった項目はメモしておき、3か月後など区切りのタイミングで見直します。見直しの担当者も先に決めておくと、更新が止まりにくいです。見直しのときは項目を足すだけでなく、使われなくなった項目を削ります。

まとめ

事務職向けのOJTチェックリストは、目的、タイミング、新人に求める行動の順で見ると、現場で迷いにくい運用へ落とせます。「請求書を作る」のような作業名だけで項目を並べるのではありません。新人に求める行動を動詞で言い切る形に統一することが出発点です。

  • 項目は作業名ではなく「何ができれば合格か」で書く
  • 知識・実技・定着の3段階で確認方法を分ける
  • 完了日と確認者を分けて記録し、承認者を先に決める
  • つまずきが多い項目は定期的に見直す

次に確認すること

まずは、新人が担当する業務から1つ選び、知識・実技・定着の表に沿って求める行動と確認方法を1行だけ書いてみます。すでにチェックリストがある場合は、差し戻しが多い項目から同じ手順で見直します。

指導担当が確認の時間を取りにくいとき、原因は指導担当自身の事務作業の多さにあることも少なくありません。定型の事務作業を外部に出せば、その分をOJTの確認時間に充てられます。事務作業を丸投げしたい…代行に頼める業務・頼めない業務を確認してみてください。代行に頼める業務と頼めない業務の線引きから見ていくと、外に出せる範囲が見えてきます。


Q&A

「請求書を作る」のように作業名だけ書いた項目が並んでいます。どう書き直せばよいですか?

項目の後ろに「何ができれば合格か」を一言足してください。たとえば「請求書を作成し、金額と宛先の見直しまで一人で実行できる」のように、合格の条件まで含めて書きます。文末は「〜を説明できる」「〜を一人で実行できる」「〜を人に教えられる」の3種類から選び、動詞で言い切る形にそろえるのが基本です。すでにある項目を直すときは、使う頻度の高い項目から順に手を入れれば、一度に全部書き直す必要はありません。

確認者の欄には誰の名前を書けばよいのでしょうか。自己評価だけで合格にしてもよいですか?

確認者の欄は2段に分け、1段目に本人の自己評価として氏名、2段目に確認した指導担当または最終承認者の氏名と役割を残します。指導担当の判断だけで先に進めてよい項目は2段目に指導担当の氏名を、最終承認者の確認が必要な項目は最終承認者の氏名を書きます。自己評価だけで合格にすると、実際には整っていない項目が残ってしまうため避けてください。最終承認者は指導担当とは別の上司などから1人に絞り、運用を始める前に決めておきます。なお「指導担当が横で1件確認する」といった確認方法は、完了日・確認者とは別の欄に記しておきましょう。

作ったチェックリストは、いつ見直せばよいですか?

一度作って終わりにせず、つまずきが多かった項目をメモしておき、3か月後など区切りのタイミングで見直す運用にします。見直しの担当者も先に決めておくと、更新が止まりにくくなります。見直すときは項目を足すだけでなく、使われなくなった項目を削ることも忘れないでください。あわせて、新人が実際に担当する業務の一覧と照らして対象範囲がずれていないかも確認しておくと、担当外の項目を合格にしてしまう手戻りを防げます。

著者

塩野谷 拓

2nd CORE代表。建設会社で7年間、総務・経理を中心とするバックオフィス実務を経験し、2022年に独立。

現在はフリーランスとして、一人社長・個人事業主を中心に、事務・経理代行、バックオフィス業務改善、Web制作を支援しています。現場で培った経験をもとに、実務で役立つバックオフィスの整え方を発信。

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